取材記事とは、対象者へのインタビューや取材を通じて得た生の声や情報をもとに構成された記事のことです。
企業のコンテンツマーケティングや採用広報の分野では、取材記事として 導入事例(顧客インタビュー記事) や 社員インタビュー記事 がよく活用されています。
取材記事では第三者の視点やリアルな体験談を伝えるため、単に企業自らが発信する宣伝文よりも読者に信頼感や共感を与えやすい点が特徴です。
一方で、
「取材記事は本当に効果があるのだろうか。」
「取材記事を作るメリットがいまいち理解できない」
といった考えを持つ方も多いはずです。
そこで本記事では、BtoB企業のマーケティングや採用広報において取材記事を制作・活用するメリットを、国内外の調査結果を交えながら詳しく紹介します。
取材記事は、前述の通り取材(インタビュー)を行い、取材対象者の生の声を記事としてまとめるコンテンツです。
企業活動のなかでは、以下の2つが代表的な取材記事の形態です。
導入事例(お客様の声)は、企業の製品やサービスを導入している顧客にインタビューを行い、その
などをまとめた取材記事です。
BtoB企業の場合は、「どのような課題を抱えていたか」「自社製品・サービスをどのように導入し、どんな成果が出たのか」を客観的に示すケースが多く、読者(見込み顧客)が導入後の具体的なイメージを持ちやすいのが特徴です。
BtoC企業でも、実際のユーザーや購入者への取材記事を「お客様の声」として活用し、リアルな使用感・満足度を伝える事例があります。
社員インタビューは、企業に所属する社員や経営層に対して行う取材記事です。採用広報でよく用いられる形態で、社員が入社した理由や現在の仕事内容、働きがい、企業文化に対する想いなど、社内の“リアル”を語ってもらいます。
読者(求職者など)は、実際の社員の声を通じて「この会社で働くイメージ」が具体的に描けるようになります。
主にBtoB企業のマーケティングでは、自社製品やサービスの導入事例(顧客へのインタビュー記事)が重要なマーケティングツールの一つとして認識されています。
実際、多くのBtoBマーケターが導入事例を活用しており、海外企業の調査では 「BtoBマーケターの75~78%がコンテンツとしてケーススタディ(導入事例・カスタマーストーリー)を過去1年に使用した」 と報告されています。※1
さらに効果面でも高く評価されており、これも同様に海外企業の調査によると「約53%のマーケターが、数あるコンテンツ形式の中でケーススタディ(導入事例)を最も成果につながるコンテンツだと挙げている」というデータがあります。※2
では、なぜこれほど導入事例コンテンツが重視されるのか、その具体的なメリットを見ていきましょう。
導入事例(お客様の声)は商品・サービスの売り主ではなくそれらを購入・導入した顧客の声で語られるため、読者(見込み顧客)にとって非常に信頼性の高いコンテンツになります。
売り主が自社製品のメリットを語るのはある種当然で、主観的な意見になりがちなので、読者にとっては説得力に欠けてしまいます。しかし、実在する顧客による声は、製品が魅力的であることの強力な裏付けとなるのです。
第三者による客観的な推薦や成功事例を示すことで、
「他社も成功しているのであれば、自社でも同様の効果が期待できるはず」という安心感を読者は覚えます。
さらに一般消費者調査ではありますが、マーケティング調査を行うニールセン社によると「92%の人々は企業の広告よりも、知らない他者からの推薦を信頼する」というデータも報告されており、導入事例コンテンツが見込み顧客の意思決定に与える影響の大きさを裏付けています。※3
導入事例コンテンツは、見込み顧客の購買検討プロセスにおいて重要な情報源です。
BtoB製品を検討している企業担当者の64%が検討段階で導入事例を求めているとされています。※3
これはBtoBに限らず、多くの人もプライベートで飲食店を探すときや、何らかの製品を買うときに、まずそのお店や製品のレビューに目を通すことが多いでしょう。
反対に導入事例がない場合は、その製品の第三者による客観的な評価を得られないため、比較検討から外されてしまう可能性さえあります。
導入事例・お客様の声を読むことで、見込み顧客は自社と近い課題を持つ他社がどのようにその課題を解決したかを具体的にイメージでき、自社が購入・導入したあとの姿を描きやすくなります。
導入事例記事を通じて、見込み顧客は”疑似購入体験”を得られるのです。
BtoB製品の特徴として、検討から購入までの期間が長いことが挙げられます。
つまり、商品・サービスを販売する企業にとっては、如何に良質なリード(顧客情報)を獲得し続け、商談へとつなげ、商談後も定期的にアプローチをし検討を進めてもらえるかが、安定的に売上をあげるカギとなるわけです。
そこでも導入事例コンテンツが役に立ちます。
事実、「導入事例を公開しているBtoB企業は、公開していない企業に比べて 63%も多くリードを獲得できている」との報告もあります。※3
具体的な手法としては、幾つかの導入事例をまとめたホワイトペーパーを制作し、ダウンロードリンクを製品サイト内に設置。
ホワイトペーパーを入手したい企業担当者にダウンロードフォームに自らの社名や連絡先といった情報を入力してもらいます。
そうしてホワイトペーパーをダウンロードした担当者は、その製品に一定の興味を持っていることは明らかなので、製品販売企業にとってはかなり角度の高い見込み顧客のリードとなるわけです。
導入事例は営業プロセスの短縮にも寄与します。
既存顧客の購入・導入による成功ストーリーを事前に提供することで、見込み顧客は自ら多くの疑問点を解消でき、営業担当者が基礎から説明する手間が省けます。事前に導入事例を営業相手に共有、もしくは商談の中で事例を紹介することで、顧客はより早く自社導入後の価値を確信でき、意思決定までの時間が短縮されるのです。
導入事例の多さは、そのまま製品に対する信頼に直結します。
導入事例が多いことは、それだけ多くの企業が導入したことにメリットを実感していることの証明になるからです。
また、導入事例記事を作るための取材として既存顧客とコミュニケーションを取ることで、
といった、今後の製品開発に活かせるヒントを得られるという副次的メリットもあります。
顧客事例の記事は自社サイトのコンテンツ資産として長期的に集客にも貢献します。導入事例は自社プロダクトに関連する具体的な課題やソリューションのキーワードを多く含むため、検索エンジン経由で見込み客を呼び込むコンテンツとしても優秀です。
さらに一度作成すれば営業資料やSNS投稿など様々な形で再利用できる点もメリットでしょう。
以上のように、BtoBマーケティングにおける取材記事(導入事例)は信頼構築から需要喚起、リード獲得、コンバージョン向上、ブランド価値向上まで幅広い効果を発揮します。
事例コンテンツは「顧客の成功」という事実に基づく非常に説得が高い販促コンテンツであり、自社の商品・サービスの価値を”客観的な視点から”証明する生きた証拠と言えます。
そのため多くの企業がコンテンツ戦略の中核に導入事例を据えており、成果を上げているのです。
次に、採用広報における取材記事、具体的には 社員インタビュー記事の効果を見てみましょう。昨今、人材獲得競争が激化する中、単に求人を出すだけでは優秀な人材にアプローチするのが難しくなっています。
そこで、自社の社員や経営者への取材記事を発信し、企業文化や働く魅力を候補者に伝える採用広報コンテンツが注目されています。
社員インタビュー記事には、求職者の心を動かし「この会社で働きたい」という応募意欲を高める効果があるのです。
採用広報で発信するコンテンツの中でも、「社員インタビュー記事が最も効果が高かった」と感じる企業が非常に多いことが調査で明らかになっています。
例えば、Wantedly社が自社プラットフォーム利用企業100社にアンケートを行ったところ、「採用広報を進める中で最も反響が良かったコンテンツは社員インタビューだった」との回答が最多となりました。※4
採用においては、多くの人材を獲得することと同等かそれ以上に、離職者を出さないことも重要です。
社員インタビュー記事は企業が求める人物像や社風を具体的に伝える手段としても有効です。例えば社員インタビューで「入社の決め手」や「働く上で大切にしていること」などを語ってもらうことで、企業の価値観や職場環境が浮き彫りになります。
求職者はそれらを読むことで、自分の価値観やキャリア観とマッチするかを事前に判断しやすくなります。
これは結果的にミスマッチによる早期離職の防止にもつながり、企業・求職者双方にメリットがあります。実際、採用広報に力を入れる企業からは「候補者の入社前の理解度が高まり、入社後のギャップが減った」といった声もあります。
人はストーリーに引き込まれる生き物です。社員インタビュー記事では、社員自身の体験談や想いを語るストーリーを通じて、候補者に共感や感情移入を生み出すことができます。
例えば
「入社当初にこんな苦労をして乗り越えた」
「この会社で成長できた瞬間はこれだ」
というエピソードが語られれば、求職者は自分がそこで働く姿を具体的に思い描き、「自分もこの成長ストーリーの一員になりたい」と感じるきっかけになります。
先ほどの導入事例では、記事を通じて読者(見込み顧客)が疑似購入体験をできると紹介しましたが、求職者は社員インタビュー記事を通じて”疑似入社体験”を得られるのです。
自社の社員が本音で語る場を設け、それを発信すること自体が企業のオープンな姿勢を示します。社員インタビューは企業の透明性を高め、信頼感を醸成することに寄与します。
実際の社員の声を通じて、普段は見えにくい社内文化や働き方を包み隠さず伝えることで、求職者との信頼関係が構築されます。
「求人票には書ききれない生の情報を届ける」という誠実な情報開示姿勢は、それ自体がブランド価値となり得ます。透明性が高まれば応募者も安心して選考に臨めるため、結果的に応募意欲や内定承諾率の向上にもつながるでしょう。
採用目的であっても発信されたコンテンツはインターネット上で広く閲覧されるため、自社のブランドイメージ向上にも役立ちます。社員が生き生きと働く姿や本音で語るコメントは、潜在的な顧客や投資家など求職者以外の目にも触れ、企業の人間味や魅力を伝える良いPRコンテンツにもなります。
実際、Wantedly社の調査では約80%の企業が自社ページ上でストーリー(社員インタビュー等)を活用中であり、そうした企業ほど認知度向上や応募者増加などポジティブな効果を感じているといいます。※6
社員発のストーリーコンテンツは「会社のファン」を増やす効果も期待でき、結果的に採用のみならず事業全般のブランディング強化につながるのです。
取材記事(インタビュー記事)は、マーケティングから採用まで幅広い領域で活用できる強力なコンテンツ手法です。その制作には手間がかかるものの、それを上回る多くのメリットが得られます。
企業の生の声を伝える取材記事は、読み手の信頼を勝ち取り、購入・応募といった行動を促す原動力になります。
BtoB企業であれば顧客導入事例を、採用広報であれば社員インタビューを活用し、自社の価値を伝える取材記事にぜひ取り組んでみてはいかがでしょうか。その積み重ねが、マーケティング成果や採用力、ひいては企業ブランドの向上につながるはずです。
出典
※1 CONTENT MARKETING INSTITUTE「57+ Content Marketing Statistics To Help You Succeed in 2025」
https://contentmarketinginstitute.com/
※2 CONTENT MARKETING INSTITUTE「B2B Content Marketing Benchmarks, Budgets, and Trends: Outlook for 2024 [Research]」
https://contentmarketinginstitute.com/articles/b2b-content-marketing-trends-research-2024/
※3 Techstiks「30 case study statistics – prove that it lead to more sales」
https://techstiks.com/case-study-statistics/
※4 HirinGeeks by Wantedly「採用広報は実際効果あるの?100社に聞いた調査結果を報告します」
https://www.wantedly.com/hiringeek/recruit/recruit_branding_research/
※5 株式会社エーオーエー「採用インタビューで魅せる!求人広告効果を最大化する方法」
https://a-o-a.co.jp/column/detail/20250225120340/
※6 HirinGeeks by Wantedly「採用広報は実際効果あるの?100社に聞いた調査結果を報告します」
https://www.wantedly.com/hiringeek/recruit/recruit_branding_research/